東京地方裁判所 昭和50年(特わ)2049号 判決
主文
被告会社株式会社栄工務店を罰金一、三〇〇万円に、
被告会社第一栄工業株式会社を罰金八〇〇万円に、
被告人清水榮次を懲役一年に、それぞれ処する。
ただし、被告人清水に対し、この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社栄工務店は東京都渋谷区道玄坂二丁目二九番一九号に本店(昭和四九年七月二九日同都同区神南一丁目一二番一六号から現在地に本店移転)を置き土木建築工事の請負を営業目的とする資本金二千万円の株式会社であり、被告会社第一栄工業株式会社は同都渋谷区道玄坂二丁目二九番一九号に本店を置き土木建築工事の請負を営業目的とする資本金一千万円の株式会社であつて、被告人清水榮次は右各被告会社の代表取締役としてそれぞれ右各会社の業務全般を統括していたものであるが
第一 被告人清水榮次は株式会社栄工務店の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の経費を計上して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ
一 昭和四六年一二月一六日から同四七年九月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六四、八九二、〇七二円(別紙(一)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、同年一一月二〇日同都同区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二五、四二七、四七六円でこれに対する法人税額が九、一二五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額二三、六二九、〇〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額一四、五〇三、四〇〇円を免れ
二 昭和四七年九月二一日から同四八年九月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一六一、六九二、七六五円(別紙(二)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、同年一一月二〇日前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四、三四三、七二九円で、これに対する法人税額が一九、六三六、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額五九、〇八七、三〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額三九、四五〇、七〇〇円を免れ
第二 被告人清水榮次は第一栄工業株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の経費を計上して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ
一 昭和四七年三月二一日から同四八年三月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四二、六三七、六二二円(別紙(四)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同年五月二一日同都同区宇田川町一番三号所在の渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇、七七三、三六一円でこれに対する法人税額が三、六九六、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額一五、四〇六、五〇〇円(別紙(六)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額一一、七一〇、〇〇〇円を免れ
二 昭和四八年三月二一日から同四九年三月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八七、九八〇、九一三円(別紙(五)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同年五月二〇日前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七、九七八、七三二円でこれに対する法人税額が九、九九九、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額三二、〇五〇、二〇〇円(別紙(六)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額二二、〇五〇、八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全般にわたり
一、被告会社の各会社登記簿謄本
一、被告人清水の当公判廷における供述及び検察官に対する各供述調書
一、小宮正の検察官に対する供述調書
栄工務店の所得額の認定証拠として
<現金、普通預金、定期預金、栄建設興業(有)勘定>
一、清水榮次の昭和五〇年四月二一日付「簿外現金について」と題する上申書
一、収税官吏石井鋭雄作成の昭和五〇年六月五日付簿外普通預金各期末残高および預金利息調査書
一、同じく昭和四九年八月三一日付簿外定期性預金各期末残高および預金利息調査書
一、同じく昭和五〇年六月一八日付栄建設興業(有)勘定調査書
<未成工事支出金>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月一九日付未成工事支出金および完成工事原価調査書
<貸付金>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月六日付社長貸付金調査表
一、清水榮次名義の昭和五〇年四月一九日付「貸付金残高明細について」と題する上申書
<仮払金>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年五月二七日付仮払源泉所得税および定期性預金利息調査書
<借入金>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月六日付簿外借入金調査書
<第一栄工業(株)勘定>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年七月一二日付第一栄工業(株)勘定調査書
<貸倒引当金>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月九日付貸倒引当金調査書
<車輛運搬具48/9期>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月九日付減価償却費調査書
<受取配当金の益金算入額48/9期>
一、右石井鋭雄作成の昭和五〇年六月九日付受取配当金の益金算入額計算調査書
<公表額及び過少申告書の存在につき>
一、押収にかかる法人税確定申告書二通(昭和五一年押第五三五号の符一、符二)
第一栄工業の所得額の認定証拠として
<完成工事高、完成工事原価>
一、収税官吏石井鋭雄作成の昭和五〇年六月一一日付完成工事高調査書(合計)
一、同じく昭和五〇年六月一七日付完成工事原価および未成工事支出金調査書
<減価償却費>
一、同じく昭和五〇年六月一二日付減価償却費調査書
<雑収入>
一、同じく昭和五〇年六月五日付雑収入調査書
<貸倒引当金>
一、同じく昭和五〇年六月九日付貸倒引当金調査書
<49/3期分の前期損益修正益、減価償却超過認容、未収金認容、前受金認容、未成工事支出金認容、貸倒引当金認容>
一、渋谷税務署長証明の第一栄工業株式会社の四七年三月期及び四八年三月期の各法人税決議書写
<公表額及び過少申告書の存在につき>
一、押収にかかる法人税確定申告書二通(昭和五一年押第五三五号の符三、符四)
(事実認定に関する弁護人の主張に対する判断)
弁護人は、被告会社栄工務店に対する判示第一の一、二の各年度のうちで貸付金勘定として掲げられている数額のうち貸付先としての山田浩徂、佐藤義雄、西村一平、松下昭二、吉田仁ら五名に対する分は、同人らがいわゆる人夫手配師であり、その求めに応じて貸付けはしたものの、貸金回収の見込がないものであつたから、それらの貸付金につき各事業年度の末期において貸付金残として計上することはできず、したがつてこれが各期首、期末間の増差は所得にはあたらない旨主張する。
しかしながら、被告人清水榮次の昭和五〇年四月一九日付上申書、山田浩徂の収税官吏に対する同年四月一九日付質問てん末書及び佐藤義雄、松下昭二、吉田仁らの収税官吏宛各上申書によると、検察官主張にかかる期末貸付金の存在が認められるうえ、これら貸付先の者からの回収が各期末時において回収不可能な状況にあつたと認めるに足る十分な証拠の存在は認めがたく、かつ被告会社においてこれら貸付金につき債権放棄ないし貸倒れ処理をしている事実も認められない以上、各期末においてそれら貸付金の存在を認定し、その増差額を計上することは当然であり弁護人の主張は理由がない。
(法令の適用)
被告会社株式会社栄工務店につき
判示第一の一、二の各所為は、いずれも法人税法一五九条、一六四条一項該当。
刑法四五条前段、四八条二項。
被告会社第一栄工業株式会社につき
判示第二の一、二の各所為は、いずれも法人税法一五九条、一六四条一項該当。
刑法四五条前段、四八条二項。
被告人清水につき
判示の各所為は、いずれも法人税法一五九条該当(いずれも懲役刑選択)。刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(判示第一の二の罪の刑に法定の加重)、二五条一項。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 中村勲)
別紙(一)
修正貸借対照表
株式会社栄工務店
昭和47年9月20日
<省略>
別紙(二)の1
修正貸借対照表
株式会社 栄工務店
昭和48年9月20日
<省略>
別紙(二)の2
<省略>
別紙(三)
ほ脱税額計算書
株式会社 栄工務店
自 昭和46年12月16日
至 昭和47年9月20日事業年度分
自 昭和47年9月21日
至 昭和48年9月20日事業年度分
<省略>
別紙(四)
修正損益計算書
第一栄工業株式会社
自 昭和47年3月21日
至 昭和48年3月20日
<省略>
別紙(五)
修正損益計算書
第一栄工業株式会社
自 昭和48年3月21日
至 昭和49年3月20日
<省略>
別紙(六)
ほ脱税額計算書
第一栄工業株式会社
自 昭和47年3月21日
至 昭和48年3月20日事業年度分
自 昭和48年3月21日
至 昭和49年3月20日事業年度分
<省略>